コジ男です。今回は、前回に引き続き、リスクの概念について説明していきたいと思います。前回の記事では、リターンとは何か、リスクとは何か、について解説しました。リスクとは標準偏差(ばらつき)であり、本来リスクとリターンは別の概念の考え方であり、必ずしもハイリスク=ハイリターンではない、ということを解説しました。
今回は、リスクについてさらに一歩踏み込んで、なぜリスクが上がると、投資をする上で危険なのか、なぜリスク(ばらつき)を下げるべきなのかについて、解説していきたいと思います。
リスクが高いと、「負ける確率」が高くなる
タイトルで結論を出してしまいましたが、リスクが高いと、その分負ける(元本割れする)確率が高くなるのです。
では、なぜそのようになるのでしょうか。論より証拠、実験をしてみましょう。今回は、以下のような実験をしてみました
- 期待リターンは0%とする(つまり、100万円投資したとき、翌年の期待リターンは100万円になるものとする)
- 標準偏差10%(つまり、1年後に、100万円が80万円~120万円になる確率が約95%)、および標準偏差20%(1年後に80万円~120万円になる確率が約68%)の2つをシミュレーションする
- 20年間の福利で運用したとする
期待リターンを0%としたのは、期待リターンがシンプルなほうが、シミュレーションとしてわかりやすいからです。今回は、それぞれ、10万回ずつシミュレーションしてみました。その結果が以下の表、グラフになります。
標準偏差10% | 標準偏差20% | |
平均値 | 1.00 | 1.00 |
中央値 | 0.955 | 0.830 |
元本割れ確率 | 55.6% | 61.1% |
10万回シミュレーションをした場合の期待リターンの平均値は、いずれも1でした。これは当たり前で、期待リターンが1になるように設計されているからです。一方で、中央値は、標準偏差10%の場合は、0.955、20%の場合は、0.830まで落ちています。つまり、10万人がこの商品に100万円を投資したとして、最も平均的な運の人は、標準偏差10%の場合は、100万円が95.5万円になり、20%の場合は100万円が83万円になるのです。また、10%の場合、55.6%の人が元本割れをして、20%の場合は、61.1%の人が元本割れをします。一方で、最も運のいい人は、100万円がそれぞれ、429万円、1,062万円になりました。
ではなぜ、こういったことが起こるのでしょうか。シンプルに言えば、「プラスはどこまででもプラスになるけれど、マイナスは0に限定されているから」なのです。上の場合だと、最も運のいいケースは10倍以上になるのに対し、最も運の悪い場合でも1.5%にしかなりません。ただ、平均が100万円になろうとすると、運のいい人の数字が上がる分、全体でマイナスになる人が増えるのです。ばらつきが大きければ大きいほど、この傾向は顕著にでるのです。
リスクとリターンの関係について
ここまでが理解できた方は、もうリスクの性質についてある程度理解できているものだと思われます。ではここから、リスクとリターンの関係について、踏み込んでいきましょう。
前回もお話したように、リスクとリターンは決して因果関係があるものではありません。上記のシミュレーションにおいても、あくまで期待リターンは0です。あくまでリスクが大きいほうが、大きくリターンを得る可能性があるだけで、期待値においては、どちらも同じな半面、中央値においては見事に差がでています。
一方で、現実問題として、リスクが高いものは、期待リターンが高い傾向にあります。なぜならば、一般的に投資がプラスサムのゲームである以上、高いリスクのものには、高いリターンを投資家が求めるからです。実際に、過去の実績を見てみると、投資のリスクとリターンには、高い相関関係があります。ただし、リスクが上がれば、必ずしもリターンがあがるというわけではないので、ここは注意しておきましょう。
投資というものは、リスクをコントロールしながら、期待リターンを高めていくものであると思っています。重ね重ね言いますが、上記のシミュレーションで高いリターンを得れるかどうかは、まったくの運になります。なので、少しでもリスクを下げながら、リターンを追うことが、投資については正しいのではないか、と思っています。近年、仮想通貨の盛り上がりやクリーンエネルギー、ハイボラの新興グロースなどが人気ですが、どこかで、リスクについて考えることも必要なのではないかな、と個人的には思っています。
まとめ:リスクを管理しつつ、高いリターンを狙おう
リスクとリターンについて、非常に簡単にまとめておきましょう。
- リスクとリターンに因果関係があるわけではないが、実際問題として高い相関はある
- しかし、リスクを上げれば上げるほど、リターンがあがるわけではない
- 一方で、リスクを上げると、平均より損をする確率、は上がる
- なぜならば、プラスの上振れには上限がないが、マイナスの下振れは0で止まるから。その分、平均値を保つため、マイナスになる確率が上がる
- 投資においては、リターンを考慮するのと同様、リスクも考慮したほうが、トータルではうまくいくと
リスクとリターンに関する解説はいったんこれで終了です。今後、実際に銘柄を選ぶときには、リターンだけではなくて、リスクについても触れていきたいという風に思っています。